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   第六回 約束の地へ

メデバ・聖ジョージ教会 6世紀のモザイク

メデバ…死海東側に位置するメデバは、イスラエルの民がモーセに率いられていた頃、アモリ人の王シホンから奪い取った町である(民数記21章23〜30節、詩篇135編11など)。19世紀の末(1896年)に6世紀のパレスチナのモザイク地図が発見され、これによって新たに聖書に登場する町の位置が明らかになった。現在も、聖ゲオルギオ(聖ジョージ)教会の床にこのモザイクを見ることができる。

ラバ…現在のヨルダン王国の首都アンマン。アモリ人の王シホンと同じ頃イスラエルに滅ぼされたバシャンの王オグの棺が置いてあった町である(民数記21章31〜35節)。巨人オグの棺の大きさは縦9アンマ×横4アンマ(約4メートル×1.8メートル)もある巨大なものであった(申命記3章11節)。またこの町は、バト・シェバを自分の妻にするために、ダビデ王がウリヤを戦死させた場所でもある(サムエル記11章)。

ヨルダン川…イスラエル北部からガリラヤ湖を経て死海に注ぐこの川は、ガリラヤ湖から死海までの直線距離約100キロメートルを、300キロメートルも蛇行して流れている。断層地帯であり、ガリラヤ湖も、死海も、その間を流れるヨルダン川も海面下に位置する。エリコに偵察に入った二人の斥候の追っ手が「渡し場まで行った」(ヨシュア記2章7節)というのは、ヨルダン川越えが簡単ではないことを暗示している。イスラエルの民の渡河に際し、ヨシュアは神の指示にしたがって祭司に契約の箱(モーセが受けた十戒を刻んだ二枚の石の板を納めている箱。出エジプト記25章10〜22節参照)を担がせ川に入らせた。出エジプト時と同じように、川の水は上流で止まり、イスラエルの民は歩いて渡ったという(ヨシュア記3章3節〜4章18節)。一説によれば、地震による一時的な岩盤の崩落によって起こった出来事という。

ギルガル…ヨルダン川を神の力によって無事に渡り、神がイスラエルとともにおられたことを後の時代に至るまで記念するために、ヨシュアは乾いている川底から12の石を担ぎ出させ、ギルガルという渡河後の民の宿営地に据えた。メデバの古代地図によればギルガルは旧約時代のエリコの町から北東に3キロの地点である。

エリコ…「月」の意。世界最古の町の一つとされる。「主の軍の将軍」と出会ったヨシュアは、6日間の包囲と沈黙の行軍につづく7日目の「鬨の声」によってこの町を落とした。当時のエリコはイエス時代のエリコ(ルカ福音書19章1〜10節など参照)の北2キロほどの地点と考えられている。落城に際し、先に偵察に行った斥候をかくまったラハブとその家族は、約束どおり命を救われた(ヨシュア記2章17〜21節、6章22〜25節)。ある教父の解釈によれば、このとき目印になった「真っ赤なひも」はキリストが十字架上で流す血の前表であり、滅ぼす者の手から命を救うしるしである。出エジプト時の小羊の血を連想させる解説である。

聖なる出会い…ヨシュアは、エリコ入城の前に「主の軍の将軍」と出会っている。その折の、「あなたの足から履物を脱げ。あなたの立っている場所は聖なる所である。」(ヨシュア記5章15節)という言葉は、モーセがホレブの山で初めて神と出会った時の出来事を想起させる(出エジプト記3章5節)。