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第二十三回  天使

「天使たちは皆、奉仕する霊であって、 救いを受け継ぐことになっている人々に仕えるために、遣わされた」
(ヘブライ人への手紙1章14節)

■ 天使(神の使い)は、神さまに創造された霊であり、人間の祈りの執り成し手、保護者であるといわれる。聖書の中では神さまご自身を表すときもある。(トビト記12章11〜20節、ヨブ記1章6〜12節など参照)

■ 教会の歴史の中で、天使はさまざまに表現されてきた。
- 初代教会では、異教神話の登場人物と混同をさけるために、青年の姿で表されることが多かった。
- 四世紀、キリスト教の公認後、天使の図像には後輪と翼が描かれるようになる。
- 中世に入ると、霊としての被造物を表すために中性(男性でも女性でもない)人物として、あるいは若い女性の姿で表現された。
- 十二世紀には、知性と自由意志を持った霊的存在という理解から、頭と翼だけの天使像が生まれ、純粋さの表現として翼のある幼子としても描かれる。以来、ルネッサンス期を通して天使の姿は幼子で表現されることが多い。
- 個別に特徴を持って描かれる天使には、鎧や剣を身につけたミカエル(天軍の長)、華やかな大使の衣装を身につけたガブリエル(お告げの役)などがある。
- 天使を表すものとしてよく描かれるのは、旗、ラッパ、杖、白衣、ユリ、枝、剣、香炉などである。

■ コロサイ書1章16節、エフェソ書1章21節などから、天使には九つの階級があると考えられてきた。
- セラフィム(seraphim)…熾天使ともいわれる。神さまの座の周りを囲む最高位の天使で、赤色で表現され6枚の翼を持つ。イザヤ書6章1〜6節参照。
-ケルビム(cherubim)…智天使ともいわれる。神さまの座を支え(詩編80篇2)、神さまの乗り物となり(詩編18篇11)、聖域を守る(創世記3章24節など)。青色で表され、4枚の翼がある。
- 王座(throni)…座天使ともいわれ、土星に象徴される。
- 支配(dominationes)…木星で象徴。
- 勢力(virtutes)…力天使ともいわれる。金星に象徴される。
- 権威(potestates)…能天使といわれ、太陽で象徴される。
- 主権(principatus)…権天使といわれ、火星で象徴される。
- 大天使(archangeli)…水星で象徴される。このうち三大天使とはミカエル(Michael=神のごとき者とは誰かの意でイスラエルの保護者)・ガブリエル(Gabriel=神の人の意で、ザカリアや聖母への告知に登場する。イスラム教にによると、マホメットにアラーの啓示を伝えた)・ラファエル(Raphael=神は癒すの意)である。ある言い伝えに拠れば、復活したイエスの墓にいたのは大天使のひとりウリエル(Uriel)だという。
- 天使(angeli)…月で象徴。守護の天使はこれに含まれる。

※キリストはこれらすべての天使に優るものである。(ヘブライ書2章7節)