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第六回 シンボル   動物が表す意味

 

「神の子羊」
「神の子羊」
(Paris, Eglise St Germain-des-Pres)

■ 小羊…キリスト

キリストを暗示する聖書の箇所…過ぎ越しの小羊(出エジプト記12章5節〜6節)、ヤーウェの僕(イザヤの預言53章7節)、洗礼者ヨハネがイエスを指して(ヨハネ福音書1章29節)、勝利のキリスト(ヨハネの黙示録5章6節・13節)などから。「神の小羊(アニュス・デイ)」とも言われ、キリストの代表的シンボルである。

■ 鷲…神のまなざし・速さ・ヨハネ福音書
子どもへの配慮(申命記32章11節)
神の業の速さ(エレミヤの預言48章40節・49章22節)
すべてを見通す目(ヨハネ福音書冒頭⇒後述「四つの生き物」参照)

■ ペリカン…キリスト
自分の血で子を養うと考えられ、キリストのシンボルとなった。新共同訳聖書で詩編102編の7にある「みみずく」は、ラテン語ブルガタ訳聖書では詩編101の7にあたり、ペリカンと訳されている。教父たちはこれをキリストの意味で解釈をしている。

■ 鳩…平和・聖霊・夫婦の信頼
平和(創世記8章10節〜12節)…オリーブをくわえた鳩の姿は、洪水によって一度壊された関係、創造主と被造物が和解したことのシンボルであり、平和の根源と考えられる。
聖霊(マタイ福音書3章16節及び並行箇所)
夫婦の信頼(雅歌2章14節)

■ 魚…キリスト・キリスト信者
キリスト…ギリシャ語で「救い主神の子イエス・キリスト」(イエスース・クリストゥス・テウ・フィオス・ソーテール)の頭文字を合わせると「魚」(イクトゥス)という単語になることから、迫害下にも記号として用いられた。
キリスト信者…洗礼の水によって新しい命に生まれたことの象徴。洗礼盤などに多く見られる。

■ 鹿…神を見ることをあこがれる者
神へのあこがれ(詩編42編2節)…水との連想から洗礼盤に多く見られる。

■ 蛇(龍)…悪霊・生命の回復
悪霊・誘惑する者(創世記3章1節〜15節・ヨハネの黙示録)
生命の回復(民数記21章6節〜9節⇒ヨハネ福音書3章14節〜15節)

■ 鶏…見張り・良心の声
朝を告げる鳥であることから、いつも目覚めて注意していることの象徴となった。風見鶏は風に象徴される聖霊の動きにいつも敏感であるという意味で教会の屋根に立てられている。
良心の声…イエス・キリストがペトロの否認を預言し、鶏の声でそれに気づいたペトロが慟哭したという聖書の記述から(マルコ福音書14章30節および平行箇所)。

■ 四つの生き物(人間の顔・獅子・牛・鷲)…四福音書
この生き物は、エゼキエルの預言1章10節に登場する。人間の顔はマタイ福音書、獅子はマルコ福音書、牛はルカ福音書、鷲はヨハネ福音書の象徴とされる。それぞれは、キリストが人間となったこと、すべてを支配する王であり、力ある方であること、献げ物をささげる祭司であり同時にご自身が献げ物となられたこと、すべてを見通す方であることを意味すると解釈されている。聖書朗読台に多く見られる。

そのほか、聖人固有のシンボルとなっている動物は、鶏(聖ペトロ)、豚(聖アントニオ)など数多い。