米軍によるアフガン空爆におけるクラスター爆弾の使用について

-正義について

 

2001 911日にアメリカに対して行われた連続テロの直後、国連安全保障理事会9月12日に1368決議を満場一致で可決しました。これにより国連はアメリカの自衛する「固有の権利」(« inherent right »)を認めたのです。

 こうして、アメリカの軍事報復は復讐ではなく、正義を実現するものとなったのです。

 しかし、B52爆撃機が高度5000メートルからのアフガニスタン空爆を開始し、多くの民間人の死傷者を出すようになると、私はこの「正義」の意味について疑問を抱くようになりました。一体どのような正義が行われているのでしょう、米軍の検閲( « Black Out »)によって、米軍による民間人の被害は報道されず、彼らの蒙った不正義は忘れられてしまうとしたら?

 

 例えば、フランスのマスコミは、アメリカがアフガニスタン空爆の際に「クラスター爆弾(CBU-87 et CBU-89)を使用したことを、ほとんど報道しませんでした。一つのクラスター爆弾のなかには無数の小弾頭が入っていて、不発弾は対人地雷になります。民間人、特に子供の死傷者が出ているとの証言があります。しかも戦争の後にも被害を及ぼし続けるのです[1]

 アフガニスタンは世界で最も地雷の多く仕掛けられた国です。人口二千万に対し、地雷の数は数千万と言われています。地雷の大部分はソ連軍によって仕掛けられたものです。ソ連軍はまた、 « Butterfly mines » 呼ばれる玩具の形をした地雷を撒き散らし、多くの子供に被害を与えました[2]

 さらに危惧すべきことは、アメリカ政府が小型戦術核兵器( B61-11 )を使用する可能性を排除することを拒否したことです[3]

 

「これは正義ではない!」このように忘れられた犠牲者は叫ぶでしょう。この叫びは「功利主義によって公益のために犠牲にされる人の叫び」[4] でもあるでしょう。

 功利主義的な正義の概念は結局は一部の犠牲の上に成り立つ方策(スケープゴート的方策)を正当化してしまいます。これに対しジョン・ロールズは「公正としての正義」 « Justice as Fairness[5] »を主張しています。つまり不平等は最も恵まれない人に恩恵を与える場合のみ正当化されるという原理です。恵まれない人を絶対的に優先することにより、全ての人の合意が得られるのです。

 今、アメリカの実現しようとしている「世界正義」は、はたして最も恵まれない人に恩恵を与えるものなのでしょうか。どうもそれは疑わしいのです。

 

 人間はいつでも無垢なものの苦しみの意味を問いつづけてきました。レビナスのいう「他者の苦しみを正当化しえない」[6]ということの意味を問いつづけてきました。この問いかけは、イスラエルの歴史において人格神との対話になるのです―旧約のヨブ記がその良い例です―しかし、その問いに対する答えは、私たちにキリストの受肉によって「苦しむ義人」として啓示されたのです。これにより、私たちキリスト者が知ったことは―私たちが信仰を得たことは―神は「今この時に義を示される」(ローマの使徒への手紙、326)ということです。

 

 ジョージ・W・ブッシュ大統領は「私たちは善い」そして「私たちは悪と戦っているのだ」と言いました[7]。しかし悪は私たちの中にもあるのです。もしアメリカがこのように人間の悲惨から目を逸らし続けるのなら―そして私たちの目を逸らし続けるのなら―アメリカは不正義を、つまり暴力を増大させるだけでしょう。

 

200226

湯沢慎太郎



[1] "Les Américains sont accusés d'avoir largué des bombes contenant des mines antipersonnel", Le Monde, mardi 23 octobre 2001

[2] "Afghanistan, le pays le plus miné de la planète" Le Monde, jeudi 18 octobre 2001

[3] ""Mininuke", la bombe secrète", Le Monde, mercredi 21 novembre 2001

[4] Paul Ricœur, Le Juste, éd. Esprit, 1995, p 94

[5] John Rawls, Théorie de la justice, Seuil, 1987 (trad. Catherine Audard, titre original A Theory of Justice, Harvard University Press, 1971).

[6] Emmanuel Lévinas, Entre nous, éd. Grasset, 1991, Le livre de poche, p 109

[7] ジョージ W. ブッシュ大統領の記者会見, 20011011

 

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