三位一体の主日

ヨハネによる福音 3・16〜18
2005年5月22日


むかし、むかし、ナルシスという羊飼いの青年がいました。
彼は、うわさにのぼるほどのハンサムだったので、自然と羊飼いの娘たちの乙女心を奪ってしまった。娘たちは、どうすれば彼の気を惹くことができるか、あらゆる努力を払い、ついには仲間同士で喧嘩になることもありました。
ある日、ナルシスが泉で水を飲もうとして体をかがめた瞬間、水の中に今まで見たことのない、美しい人が現れました。
まだ鏡のない時代だったので、ナルシスはこの水の中の人が自分自身であるということに気付くことができませんでした。ナルシスは、不幸にも、この美しい人に一目ぼれしてしまうのです。
恋に落ちた彼は、水辺から離れようともせず、飲み食いすることさえ忘れてしまいます。そんな彼を見た羊飼いの娘たちが不憫に思い、悲しむ中で、ナルシスは段々やつれていき、ついには息絶えてしまいました。ところが、彼が命を落とした、その場所に一輪の花が咲きました。
人々はその花を水仙と呼びました。

ギリシャ神話に出てくる、この悲しい話は、私たちにいろいろなことを考えさせてくれます。
私たちはみんな、家族、友達、隣人との関係の中で暮らしています。
もし、私が「私の世界」だけに安住しようとすれば、ナルシスト同様に、破壊的になり、結局は死を招いてしまいます。
ナルシスが死んだ理由は、まさに、ここにあるのです。

三位一体は、今日、私たちに「私の世界」ではない「私たちの世界」を伝えてくださいます。私たちの家族、私たちの町、私たちの国、このように結束された時、私たちは一致を実現することができるのです。私たちは「私たちの世界」を作り出す義務を与えられています。それこそが愛なのです。
自分のことだけ考えるのではなく、みんなが共に「私たち」という考えを持って暮らすことができるように、三位一体の神に祈りましょう。

アーメン

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