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 第十六回 聖書の舞台いろいろ

 クルシ…ガリラヤ湖東のクルシの地は、「ゲラサ人の地方」あるいは「ガダラ人の地方」と呼ばれる。イエスが男から追い出した「レギオン」という悪霊の群は、イエスの許しを得て近くにいた豚の群に乗り移った。2,000頭の豚は湖になだれ込み、溺れて死んでしまう。あまりの出来事に人々はイエスに町から出て行ってくれるよう頼む(マタイ福音書8章28〜34節および平行箇所)。

         ハロデの泉…士師ギデオン(士師記7章)がミディアン人との戦いにあたって300人の勇士をえり分けた地。人数の多さによってではなく神の力によって勝利したことを知らせるために、泉の水を手ですくって飲んだ兵士だけが選ばれた(士師記7章1〜8節)。

         コラジン…ガリラヤ湖北北西に位置。ベトサイダ(ガリラヤ湖北東岸。ペトロ、アンデレ、フィリポの出身地。)、カファルナウム(ガリラヤ湖北西岸。イエスの活動の基点。)とともに、回心しないかたくなさを非難されている(マタイ福音書11章20〜24節)。いずれも現在は廃墟となって、遺跡が残っている。比較されたソドムとゴモラは悪のゆえに滅ぼされた旧約の町(創世記19章)、ティルスとシドンはフェニキア(現レバノン)の港町で、地中海に面している。

         エラの谷…初代イスラエル王サウルとペリシテ人との交戦地。ベツレヘムの西方。少年ダビデ(ベツレヘムのエッサイの子でサムエルから油を注がれた。サムエル記上16章)はここで巨人ゴリアトと対戦し、「石投げ紐と石一つ」で勝利する(サムエル記上17章)。

         ベト・シェアン…ペリシテ人との戦いに敗れ、初代イスラエル王サウルとその息子ヨナタンはギルボア山上で戦死する。敵の手にかかるのをよしとせず剣に伏して自害したが、翌日遺体を発見され、首を切られ、当時ペリシテ人の町であったベト・シャンの城壁にさらし者にされる(サムエル記上31章)。現在、べト・シェアンではローマ時代の遺跡をはじめ、古代からの都市が何層にも渡って発掘されている。

         ベエル・シェバ…アブラハムが井戸をめぐって争った町(創世記21章30節)。ヘブロンの南西に位置する。現在も「アブラハムの井戸」といわれる深い井戸が残っている。聖書の舞台の最南端の町として「ダンからベエル・シェバまで」と表現される。ダンはガリラヤ湖北方の町の名である。