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第二十回 十二使徒      遣わされたもの                    

マタイ10章2〜4節、マルコ3章16〜19節、ルカ6章14〜16節、使徒1章12〜26節参照。
「12」という数は、イスラエルの十二部族との対応から、新しいイスラエルを象徴するということもできる。

 

「ペトロ」
(ローマ、サンタ・マリア・マジョーレ教会)

 

「フィリポ」
(ローマ・十二使徒教会)

 

「マタイの召命」
(ローマ)

 

「小ヤコブ」
(ローマ・十二使徒教会)

 

ユダの裏切り
(パリ・StFrancois Xavier 教会)

■ ペトロ…シモン・バルヨナ(マタイ16章17節)すなわちヨハネの子シモン(ヨハネ1章42節)にイエスが与えた名前(マルコ3章16節)で、ギリシア語で「岩」の意(マタイ16章18節参照)。同意のアラム語で「ケファ」(ヨハネ1章42節、パウロの書簡)とも呼ばれる。アンデレと兄弟。十二使徒の頭でありネロ皇帝の迫害下にローマで殉教したといわれる。祝日は6月29日。(講座11参照)

■ アンデレ…ペトロの兄弟で漁師(マタイ4章18節)。イエスに従う前は洗礼者ヨハネの弟子(ヨハネ1章40節)。ペトロ(ヨハネ1章41〜42節)・大麦のパンを持つ子供(ヨハネ6章8〜9節)・イエスに会いたいと望んだギリシア人(ヨハネ12章20〜22節)をイエスに引き合わせている。60年ごろアカイア(現在のギリシア)のパトラスでX型の十字架に架けられて殉教したといわれる。祝日は11月30日。

■ ゼベダイの子ヤコブ…ヨハネの兄弟。性格の激しさから(ルカ9章54節参照)「ボアネルゲス(雷の子ら)」と呼ばれる(マルコ3章17節)。ペトロ、およびヨハネと共にイエスの側近(マタイ17章1節他)。母親がイエスに将来の地位について配慮を求めたことがある(マタイ20章20〜23節)。スペインまで宣教に赴いたとも言われる。ヘロデ・アグリッパ1世により殉教(使徒12章1節)。9世紀前半、その遺体が奇跡的にスペインに運ばれたという伝承により、Santiago de Compostelaは中世以来の巡礼地となっている(巡礼者のしるしが貝殻だったことから、貝の名前にもなった)。祝日は7月25日。

■ ヨハネ…ゼベダイの子ヤコブの兄弟で、父やヤコブ同じく漁師(マタイ4章21節)。ヨハネ福音書では「イエスの愛しておられた者」と呼ばれる。最後の晩餐ではイエスのすぐ傍に(ヨハネ13章23〜25節)、ゴルゴタの丘では聖母と共にイエスの十字架の下に(ヨハネ19章26〜27節)、また復活の朝には空の墓に(ヨハネ20章1〜20節)立ち会っている。伝統的に第四福音書の記者とされ、新約聖書中の三つの書簡と黙示録も彼の名を冠して書かれている。象徴は鷲。祝日は12月27日。

■ フィリポ…ペトロおよびアンデレと同じベトサイダの出身(ヨハネ1章44節、12章21節)。ナタナエル(ヨハネ1章45〜46節)やイエスに会いたいと望んだギリシア人(ヨハネ12章20〜22節)をイエスのもとに導いた。小アジアで十字架に架けられて殉教したと伝えられる。祝日は小ヤコブと同じ5月3日。

■ バルトロマイ…ヨハネ福音書のナタナエルと同一人物。フィリポの紹介でイエスに出会う。伝承によればアルメニアで生きたまま皮をはがれて殉教したといわれる。祝日は8月24日。

■ トマス…「双子」の意で、ギリシア語では「ディディモ」(ヨハネ11章16節他)。3世紀にさかのぼる伝承「トマス言行録」によるとインドまで宣教に赴いたとされ、実際に古いキリスト教共同体が確認されている。マドラスの丘の上で槍を受けて殉教したとも言われる。イエスの復活を信じず、証拠を求めたという出来事により(ヨハネ20章24〜29節)、ろば(不信仰のシンボル)あるいは差金(正確さのシンボル)と共に描かれることがある。建築家の保護の聖人。祝日は7月3日。

■ マタイ…アルファイ(ヤコブとヨハネの父親とは別人)の子レビ(マルコ2章14節他)とも呼ばれる。イエスの弟子になる前は、徴税人として裕福な人物であったと思われる(マタイ9章9〜10節)。伝統的に第一福音書の著者と考えられ、翼を持った人間の顔で象徴される。福音書冒頭の系図は「エッサイの木」(イザヤ11章1節)のモチーフにもなっている。祝日は9月21日。

■ アルファイの子ヤコブ…小ヤコブ。聖霊降臨後はエルサレムの教会を代表する人物として活躍したと考えられる(使徒15章13〜21節)が、伝承の混同があり定かではない。ヤコブの手紙の著者であるとすれば、62年に石殺しで殉教している。祝日はフィリポと同じく5月3日。

■ タダイ…ヤコブの子ユダ(ルカ6章16節他)と同一人物で、「イスカリオテでないほうのユダ」とも呼ばれる(ヨハネ14章22節)。ユダの手紙は彼の名を冠していると思われる。メソポタミアで宣教したという伝説もある。祝日は熱心党のシモンと共に使徒ユダの名で祝われ、10月28日。

■ 熱心党のシモン…熱心党は1世紀のユダヤの団体で、ローマの支配権力に反対し、律法への徹底した忠誠を行動であらわした。ガリラヤの反乱(使徒5章37節参照)に始まるといわれる。ある伝説によればエジプトで宣教し、のちにタダイと合流して共にペルシアへ行き、そこで殉教したといわれる。祝日は10月28日。

■ イスカリオテのユダ…「ケリヨトの人ユダ」の意(ケリヨトはユダヤの町の名cf.ヨシュア15章25節)。シモンの子(ヨハネ6章71節)。使徒団の会計係(ヨハネ12章6節他)で、イエス逮捕の手引きをした(マタイ26章14〜16節、47〜50節他)。事態の推移を見て後悔し、自殺した(マタイ27章3〜10節)。財布、銀貨、キリストに接吻する姿などで表現される。

■ マティア…イスカリオテのユダの後任として十二使徒に加えられた(使徒1章15〜26節)。伝承によればカパドキア(現在のトルコ東部)で宣教し、62年ごろ殉教した。祝日は5月14日。

 

 

 

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