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第十八回  聖なる三日間                      Sacrum Tridium Paschale

カトリック教会の典礼暦は、聖木曜日の「主の晩餐のミサ」から「復活の主日の晩課」までを聖なる三日間と呼び、最も重要視する。
「弟子の足を洗うイエス」
Calvaire de TRONOEN (Bretagne)

■ 聖木曜日
主の晩餐のミサ…聖書の記述にしたがって、いわゆる「最後の晩餐」におけるミサの制定が記念される。旧約時代の「過越し」からキリストによる「新しい過越し」への移行を意識づけるものである。この日は、聖香油ミサを除いて「主の晩餐のミサ」以外のミサは捧げることができない。儀式的な特徴は、キリストが弟子の足を洗ったという故事にちなんだ「洗足式」と、キリストの逮捕を象徴する聖体の移設、祭壇飾りの撤去である。伝統的に、移設された聖体の前で徹夜もしくは深夜までの礼拝が行われる。このミサのグロリア(栄光の讃歌)から復活徹夜祭のグロリアまでは、オルガン演奏・伴奏や鐘楼の鐘を鳴らすのを慎む場合もある。典礼色は白を用いる。
「ピエタ」
Sacristie des Missions Etrangeres de Paris

■ 聖金曜日
受難の祭儀…前日に飾りを撤去して裸のままの祭壇(キリストの死を象徴)でキリストの受難と死を記念する。時刻は聖書の記述にしたがって午後三時から行われることが多いが、事情により夕刻に行われる場合もある。この日、公の礼拝はこの受難の祭儀のみで、ミサも行われない。一般には聖書の朗読、「ヨハネによる主イエス・キリストの受難Passio Domini Jesu Christi secundum Joannem」(「ヨハネ受難曲」と呼ばれる芸術作品のモチーフ)、共同祈願、十字架の礼拝、聖体拝領で構成されるが、祭儀の前後あるいは別の時刻に「十字架の道行」(Le Chemin de La Croix)を行うことが多い。典礼色は赤を用いる。

■ 聖土曜日
この日は一日中、復活祭の準備のために当てられ、一切の公の礼拝は行われない。典礼暦の伝統により聖土曜日の日没から復活の主日が始まる。

■ 復活徹夜祭
教会の伝統で「あらゆる徹夜祭の母」と呼ばれるこの徹夜祭は、夕刻ではなく「夜」行われる。祭儀は世の光キリストを示す「火の祝福」から始まり、復活のキリストを象徴する復活の大ローソクがかかげられてキリストの復活が宣言される。参列する信者は皆、キリストのいのちを受けたしるしに各々のローソクに光を受けていく。告いで旧約から新約にいたる聖書が朗読され、説教の後、洗礼式が行われる。参列者がそれぞれ自分の洗礼を意識するために、洗礼水が一同に振り掛けられ、感謝の祭儀(普段のミサの後半部分)へと続く。四旬節の間控えられていた「アレルヤ」が復活祭を告げる。

■ 復活の主日
聖書によれば、弟子たちがキリストの復活に気づいたしるしの一つは「空の墓」である。典礼的に特別の特徴はないが、それは毎日曜日のミサがこの復活の朝の再現であるということである。